2012年3月12日月曜日

緊急時に出来ること

東日本大震災以降、「リスク」や「危機管理」などが新聞、テレビなどで頻繁に取り上げられるようになった。
また直近では、原発事故から数日間の「連絡」の不備・不足が、危機・混乱を増幅させたのではないかと指摘する報告もされている。

大きな事故が発生した場合、事故報告や二次災害の防止対策のための緊急連絡の方法が決められているのが普通であるが、実際には連絡しても繋がらない事がしばしば発生する。その時に如何するのかを事前に決めていないとパニックになり、さらに深刻な二次災害が起こることもある。

私は神戸・淡路大震災の時に、岡山県にある合成繊維製造工場にいた。この時は幸いにもけが人もなく、操業機の一時的な停止等のトラブルはあったがすぐに復旧が出来、少ない被害にとどまった。しかし、本社(大阪)との連絡が全く取れず、指示命令なども一切なく、神戸の被害はテレビで知るという経験をした。本社の責任者に工場の状況を伝え得たのは当日の午後になってのことであった。本社の責任者たちの自宅などが大きな被害を受けていたことは後で知った。

緊急連絡の方法などの検討はもちろん必要だろう。しかし緊急時、上の指示無しで、担当者がしてもいいこと(すべきこと。出来ること。)を予め決めておけばいざというときにモノをいうこともある。

例えば、2011年1月2日 島根・鳥取間を結ぶ国道9号線で、記録的な大雪のために多くの車が立往生し多くの人々が車中泊を余儀なくされたときのこと。おにぎり700個を2時間かけて配った運転手がいた。コンビニエントストア「ポプラ」の社員だった。彼は、配達できなくなった分を空腹の人たちに無料でプレゼントしたのだ。これは、上の指示ではなくこの社員の判断で行ったということだった。連絡もつかなかったのだろう。「ポプラ」はこれで人々の感謝の的になり評判を上げたのだ。ディズニーランドの話と似ていて心を打つ。

この場合の基本は、会社が何を大事にしているか、社員一同がそれをきちんと理解しているかであろう。このことは危機管理(リスクマネジメント)を考える上でも大事な事と思うのだ。  
                    株式会社アール・エム・アイ  江嵜為丸

2012年3月6日火曜日

ディズニーの危機管理体制

3月2日京都商工会議所のイブニングセミナーは300名ほどの聴講者であふれた。
「ディズニーの危機管理体制」(JSパートナー㈱福島文二郎氏)というテーマに強い関心を持つ人が多かった。弊社は「リスクマネジメント研究所」を社名にしている。有益な講演を楽しみに3名参加した。

ディズニーの危機管理の原点、または基礎となる考え方は何か?というのが私の一番聞きたかったことであった。私が講演の中から受け取った答えは「従業員(キャストと言う)の働きがい(Job SatisfactionまたはEmployee Satisfaction)を作る」ということ。

自転車の例で図解すると、前輪部分がCS(Customer Satisfaction)、後輪部分がJS・ES。駆動部分は後輪にあり、車体は両輪がうまく回るように設計し運用される。
ハンドルはミッションでありCSとJS・ESが同じ方向になるようにする。

3.11その日、「ディズニーの危機管理体制」はどのように働いたのであろうか?
東京ディズニーランドでは、当日園内にいた多くの人たちに対し、キャスト(ほとんどの人がアルバイト)が行なったことが感動的として報道された。
怯える子供たちに売り物のぬいぐるみ人形を与えて、怖がらなくてよいと力づけたり、ビニールの袋に穴をあけて、簡単な雨カッパを作って提供したことなどが例示された。また、これらのことをディズニーランド全体で直ちに実施できたのは、日頃の内部教育によると言う事。重要な点は、これらの事は上の指示ではなくキャストの判断で行なえたと言う事である。

他の人に何かして喜んでもらおうという気持ちを持たせるには、教育、人事・福利厚生、コミュニケーション等のシステムの充実が必要で、時間と費用を掛けている事が感じられた。講演では踏み込んだ説明は少なかったが、ディズニーの危機管理体制維持のために、これらのシステムに関連したマニュアル類が整備されており、かつうまく機能しているということだ。

大事なのは、いざと言う時現場で対応が出来ることだと思う。いちいち上司や本社に連絡し、了承をとらないと出来ないというのは、危機状態では対応が遅れるだけである。3.11その日からしばらくの間、どれだけのことが対応できずに終わってしまったことだろう。
ディズニーの対応の実例は、平常時とは違うルールを持ってではなく、平常時でも非常時でも同じルールで対応出来ることの必要性を教えてくれている。

㈱アール・エム・アイ  江嵜 為丸