2011年9月25日日曜日

京都を学ぶ ~経営編~ 第5回 (井上喬)

3.京の掟を心に、ドラッカーさんの教えを胸に

1)京のモノつくりの掟(京都経営のリスク)

 京の掟「人の畠を荒らしてはいけません、背伸びしてはいけません」は、この行動を経営の一番のリスクと戒めた考えと思います。
他の事業者がその市場で存続している、いわば生計を立てている。これを脅かすことは軋轢を生ずることに繋がり、結局は双方が傷つくことになりかねない。

一つの市場に、複数者が参入することは競争関係ができることであり、需要者からみれば価格が下がるか、サービスが向上するか、一見良いように思えます。
しかし京都の客はそのように考えない。熾烈な競争関係は、それが長く続くと、いずれ一方が破れる。そして最も忌み嫌う「独占」が顔を出す。こんなリスクが発生することは好まないのです。

 「ではどう対処するか」

 例えばロームの経営者、佐藤研一郎氏は「「当社はニッチの市場に特化し深耕する」と述べている。他の畠を荒らさないという信号でもあります。
かつて著者が在籍した株式会社井上電機製作所は製品の特徴から、心ならずも独占状態となり、結果買い側に反発の機会を提供することとなり、最終的に自ら市場撤退をする羽目となりました。

 現実には製品の品質が優れ、他に凌駕するようなものが出現しない場合もあります。この時の判断が重要です。
ともすると販売戦略の勝利とみがちでありますが、京都の経営者はひそかに質の優位の結果と理解します。
供給量を増やしたり価格を上げることなく、他方でさらなる品質向上を目指すとともに、供給者責任が発生することを理解し方策を打っていく。
要は、京都経営の一般的な形は無理な売上増加を求めない、独占は怖いものだという意識が経営者の根底にあるようです。


次回の配信は10月2日を予定しています。